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2026-06-21 (日)

2026-06-21 日次メモ
まこ テキスト

午前四時。深い静寂に包まれた寝室に、どこからともなく低い唸り声が響いた。 泥のような眠りの底から意識を引きずり上げられる。声の主は、隣で丸くなる小さな塊——息子だった。私は重い体を起こして彼をそっと抱き上げ、小さな背中を手のひらでリズミカルに叩く。予想通り、小さな口からこゅう、と可愛らしいゲップが漏れた。 だが、彼の苦しげな唸り声は一向に治まる気配がない。

(お腹が張っているのか……)

原因を察した私は、暗がりの中で手早くおむつを開き、綿棒浣腸の準備に取り掛かった。細い綿棒の先をオイルで湿らせ、慎重に小さな蕾へと宛てがう。 それがゆっくりと内側へ触れた、その刹那だった。

——ぶぶるぶぶぶぅんッ!!!!

深夜の寝室に似つかわしくない、けたたましい破裂音が轟いた。 同時に鮮やかな黄色の飛沫が勢いよく宙を舞い、私の顔面に生温かい数滴が着弾する。文字通りの惨劇だった。 頬に飛んできたそれの感触に一瞬だけ呆然としたものの、私の口元には自然と笑みが浮かんでいた。息子の顔を覗き込めば、先ほどまでの苦悶は嘘のように消え去り、すっきりとした安堵の寝顔がそこにあったからだ。

君がこんなにも気持ちよく眠れるのなら、これくらいの犠牲などどうってことはない。 汚れた顔のまま、私は愛しい我が子の額にそっと触れた。

おやすみ、千景。

  • まこ
    まどろむ間もなく、早朝六時半。再び小さなぐずり声が寝室の空気を揺らした。

    「どうしたの、千景」

    顔をしかめて身じろぎする息子を、私はそっと抱き上げた。
    その瞬間、手のひらに伝わってきたのは予想外の重たい「濡れ」だった。小さな背中が、びっしょりと湿っている。慌てて視線を落とせば、彼が先ほどまで横たわっていたシーツまでが、ぐっちょりと濃い色に染まっていた。

    枕元の温湿度計に目をやる。室温は25.5度。
    冷房を切って除湿運転に切り替えていたものの、夜の間に湿度は60パーセント近くまで上がってしまっていたようだ。

    モロー反射を防いで安眠を約束してくれる我が家の神アイテム「ユニースリープ」だが、唯一の欠点はこうして熱がこもりやすいことなのだ。

    「ごめんごめん、暑かったね」

    汗で冷えて風邪を引かせてはいけないと、私は速攻で彼を真新しい肌着へと着替えさせた。

    それにしても——。濡れた小さな背中をタオルで拭きながら、私はふと胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

    ほんの少し前まで、自分の力で体温調節すらままならなかったこの子が、こんなにも立派に汗をかけるようになっただなんて。シーツを濡らすほどの大量の寝汗は、彼が力強く生きている証であり、確かな成長の証拠だった。

    けれど、悠長に感動してばかりもいられない。
    これだけ大量に汗をかいたのだ。小さな体にとって、一番心配なのは脱水症状だ。

    「いっぱい汗かいたから、たくさん飲もうね」

    すっきりした服に包まれ、まだ少しぼんやりとしている小さな口元へ、私は急いで胸を運ぶ。

    顔面への飛沫弾から、休む間もなく迎えた早朝の汗だく騒動。母の朝はいつだって慌ただしいけれど、一生懸命に喉を鳴らす君の姿を見ていると、今日の寝不足もまた愛おしいものに思えてくるのだった。
  • りょうや
    大ドラマやってますやん。

    ユーニー、一応冷感タイプの方のシーツにしたんだけど、あちちだったか。

    最初、漏らしてたのかと思った
  • まこ
    シーツは冷感でばっちし👌やねんけど、構造上、内側が、蒸し蒸しになっちゃうねんなぁ。お漏らしかと思ってにおったけど、アンモニア臭しなかった
りょうや テキスト
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エチオピアの思い出といえばカフェ

土日のルーティンとして、街のカフェに足を運ぶようになった。そのきっかけは、紛れもなくマコと出会ってからだ。

思えば、これまで数多くのカフェを一緒に開拓してきた。現在でこそ行きつけは2、3軒に固定されてきたが、ここエチオピアでは選択肢に困ることはない。何しろ、100メートルも歩けば、右にも左にも一つか二つ以上のカフェが平然と看板を掲げている国なのだ。 そんな数ある店の中でも、『Nelliy’s Cafe』にはとりわけ印象深い思い出がある。 あれは平日の19時ごろだった。家での夕食を終えたあと、当時、妊娠中だったマコを連れて「気晴らしに一杯飲もう」と外に連れ出した時のことだ。 コーヒーに合わせて何か甘いものでもつまみたい。そう思い、ガラスケースの中のケーキを物色していた僕の目に、素朴なビスケットが留まった。 「これを貰おうか」と店員に頼む。すると、返ってきたのは耳を疑う言葉だった。 「2kgからだ」 注文は2kgから。耳を疑った。コーヒーのお供に頼むビスケットの注文単位として、およそどこのカフェでも聞いたことがない数字だ。

とにかく意味が分からなかったが、引き下がるのも癪である。押し問答の末、しょうがなくオーダーした。 出てきたのは、案の定、途方に暮れるほどの山。 味はまずまずで、心地の悪い甘味と小麦粉の味に水分を奪われる。 結局、2枚食べたところで限界を迎えた。ならばと期待したケーキの味もまた、一言で言えば微妙。散々だった。異国での洗礼に苦笑いするしかなく、帰り道、口直しのために別のカフェへ立ち寄り、もう一杯のコーヒーと別のケーキを胃袋に流し込む始末だった。

さらに言えば、この店の珈琲の概念も少しおかしい。 「アメリカーノ」を頼んでいるのだ。本来なら、エスプレッソを水で薄めて飲みやすくしたものであるはずだ。しかし、ここで出てくるアメリカーノは、まるでエスプレッソそのもののような暴力的な強さを持っている。 だが、そんな一見すると理不尽極まりないこの店にも、他店では絶対に替えのきかない逸品が存在する。 アボカドトーストだ。これだけは、他店の追随を一切許さない。 少し冷やされ、新鮮で瑞々しい口触りを残したアボカドの切り口。そこに、ピリッと辛みの効いたイタリアン風のソースが絡む。この濃厚で冷涼な具材が、よく焼き上げられたドライなトーストの食感と見事なコントラストを描き、口の中で完成するのだ。これがあるから、僕はこの店を嫌いになれない。 朝にしては大きすぎるBGMがガンガンと店内に響き渡っている。

今日もひとり、その騒音のなかで、相変わらず苦く強いアメリカーノに顔を顰(しか)めている。そして、胃袋が覚えているあの最高のアボカドトーストを、性懲りもなく口に運ぶのだ。

エチオピア生活 カフェ アボカドトースト Ethiopia

  • まこ
    いいエピソードだ!!
  • りょうや
    2人分かってくらいのアボカドトーストとアメリカーノ一杯で630円ほど
  • まこ
    ちなみに大量のクッキーはTMの受付のにーちゃんにおすそ分けしました。
りょうや テキスト
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初めての父の日

初めての父の日だった。

画面越しに届いたのは、1枚の色紙に8枚の切り抜き写真と、色違いの左右の小さな足形。そこには「Happy Father's Day」と文字が添えられていた。まだまだ小さくて、だけどまたいつの間にか少し大きくなってしまった、千景の足。

文字通り初めて迎える「父の日」だ。 これまでの人生、この日は完全に無関係なものだった。父親がいない環境で育った僕にとって、気にとめる必要すらない、ただの1日。極端に言えば、6月21日が父の日であるということすら、これまでの僕は知らずに生きてきた。

0歳1ヶ月の千景が作ってくれた(もちろん、実際にはICLの手術日でもあるマコが裏で準備してくれたのだろう)それは、言ってしまえばただの紙と、ただの写真だ。

それなのに、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。なんとなく、自分の中に「父親」としての自覚が、これまでになく強く根を張ったような気がする。

冗談混じりで「はぁ、アフリカの僻地で家族のために、単身で出稼ぎに来て父親は何て、、、」とか話していた。 これまでは、家族なんて関係なく、ただ自分の好きな場所を選び、自分のために自由にやってきた仕事だった。だけどその色紙を見た瞬間、改めて意味が変わったように感じる。僕の仕事が、足跡は、これから「家族のため」という理由に収束していくのだと、そんな予感がした。

映画やドラマのなかで、男たちが決り文句のように口にする「家族のために」という言葉。なんとなくだけど現実味がなく、どこか薄っぺらい、ありがちなフィクションの台詞として聞き流していたことに気づいた

けれど今、その言葉はもう、どこかの誰かのありふれたストーリーではなく、荒井遼也の、血の通った人生になった。

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