在外事務所で起きた、地味に笑えない話をする。
半年以上前、去年の秋の時点から、前任の所長と総務担当の次長に「来年の5月と8月に休暇を取りたい」と繰り返し相談していた。年明けにも、新たな次長に同じ日程を伝えて了承をもらっていたはず、という認識でいた。人事部にも「制度上問題ない」と確認済み。準備は万端だった。
理由はシンプルで、配偶者の出産に合わせて、本来なら前の休暇のタイミングをずらしたこと。そのせいで、次の休暇までの間隔が本来の6ヶ月から2ヶ月程度に縮んでしまった。産後の母体のケアと育児体制を整えるための後ろ倒しで、悪意も特別扱いもない、ただのタイミングの問題。
同じ制度を使って、似た時期に同僚が休暇を取った実績もあったので、それも根拠として伝えた。
のに、いざ直前になって新任の所長からストップがかかる。 「間隔が短いので、対外的に説明できる理由が必要です」と。
その理由、去年の9月からずっと伝えてたし、全然大丈夫ですよ、と聞いていたんだけど。 しかも新所長自身、着任は去年の10月。管理職の間で全く共有がなかったとでも言うかのように(1番近い部下のせい?)
経緯と過去の相談状況を説明したら、返ってきたのは丁寧ながらも、「前任者の了解を盾に、自分の判断を縛るな」と言わんばかりの返信。
「圧力をかけられている」と受け取り、誰にも指摘されていないのに自分から自己防衛に走る展開に。しかも「最終的に判断の責任を持つのは自分だ」「なぜ直接自分に相談してくれなかったのか」と、置いてけぼり被害者ポジションにまで発展させていく。仰るとおり、規定でも判断は所長となっているので、グダグダ他人のせいや本部への確認をしていないで判断したらどうだ?
背景として、最近は海外駐在員の休暇が週刊誌に面白おかしく書かれたり、会計検査で細かく突かれたりする空気があるらしく、「責任者として正々堂々と説明できるようにしておきたい」という主張自体は理解できなくもないし、最大限度に共感して、宥めるように返信をした。
9ヶ月前から共有していた予定を土壇場でひっくり返されるのは、こちらとしてはたまらないというのが本音ではあるが。
こちらは終始低姿勢だった。 「ご懸念わかります」「必要な資料は全部出します」「難しければ私費休暇扱いでも構いません」 それでも返信は毎回「制度上の立場として」「対外的な説明が」の一点張り。中身は結局、保身の話しかしていない。
悩みに悩んだ?所長が本部の人事部に「念のため」確認を取ったところ——秒で終わった。
「今回のケースは、任期中に取得できる休暇の総数の範囲内であり、育児休業に準じる理由として問題ありません」
こちらが最初から言っていた結論そのままで、あっさり着地。ちなみに人事部からは今年2月の時点で、出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)の案内もすでに受けていたが、今回はそちらを使わない前提での話だった。
承認が出たので、律儀に所長のところへ「ありがとうございます」と伝えに行った。返ってきたのは「まあ本部も週刊誌の件とか気にしてたからね」「休暇は権利であって義務じゃないから」というような話。大事な時期に休暇を取らせてあげたい、という気持ちは最後まで一切伝わってこなかった。
権利と義務の話も、正直ずれていると思う。権利を保障するのはそもそも事務所側の義務であって、こちらが恐縮しながら言うような筋の話ではない。まるで「権利を行使する側が謙虚であるべき」みたいな言い方をされると、そもそもの立て付けを勘違いしているのでは、と思ってしまう。
一番モヤるのは、判断に迷うこと自体は別にいい。でもその不安を、誰にも攻撃されていないのに「相手のせい」「前任者のせい」「圧力をかけられた」と外部に投影して、自分から自己防衛に走るタイプだと、今回のやり取りで丸わかりになったこと。
本来「確認すればいいだけ」の話を、勝手に対立構造にして、しかも本人に直接言わず、メールの行間で疑いを匂わせる。承認後もねぎらいの言葉ひとつなく、権利と義務を履き違えたようなコメントで締めくくる。
リーダーシップって、こういう小さなところに出るんだなと改めて思った出来事でした。