スヤスヤと眠る千景の小さな寝顔を見つめながら、ふと今日一日の出来事を思い返してみる。 もしかすると、あんなに激しく泣いてしまったのは、今日が彼にとって少しばかり「刺激的すぎる一日」だったからかもしれない。
今日はJR線に加えて、大阪の地下鉄にも乗って有紀の実家を訪ねた。地下鉄特有のガタンゴトンという激しい走行音や、時折響き渡る鋭い汽笛の音。
大人にとっては気にも留めない日常のノイズも、まだこの世に生まれて間もない千景にとっては、目まぐるしく変化する驚きに満ちた大冒険だったはずだ。
それでも、えらいことに千景は電車の中で一度も泣き声を上げなかった。
ただ、それには過酷な条件が一つだけあった。私が少しでも楽をしようと座席に腰を下ろすと、途端に不機嫌になってぐずり出し、たとえ気持ちよく寝ていたとしてもパチリと目を覚ましてしまうのだ。
だから私は、電車に乗っている間ずっと立ちっぱなしで、千景が安心するようにひたすら小刻みに体を揺らし続ける必要があった。言うまでもなく、体力勝負のハードな時間だった。
けれど、今日のママは無敵だったのだ。
足元でしっかりと私を支えてくれていたのは、HOKAのシューズ。ずっと立ちっぱなしで揺れ続けていても、足の裏から伝わる疲労をふわりと吸収して負担を軽くしてくれる、今の私にとって魔法のような靴だ。
(遼也、本当にありがとう……!)
心の中で夫へ感謝の言葉を呟く。ちなみに、今日のお出かけのお供に選んだのは、どんな服にも馴染んでくれる黒い方のシューズだった。この靴がなければ、産後の弱り切った足腰はとっくに悲鳴を上げていたに違いない。
大きな音に驚きながらも外の世界では泣かずに耐え、立ちっぱなしの揺れの中で必死に過ごしていた小さな体。
そりゃあ、安全な家に帰ってきておっぱいを急にたくさん飲んだら、小さなキャパシティーを超えて大爆発もしてしまうよな、と今なら妙に納得してしまう。
「今日はいろんな音を聞いて、いっぱい頑張ったね。お疲れさま」
ユニースリープの中で定期的にモロー反射を繰り返し動き回る千景の腕をそっと撫でながら、私もようやく、目を閉じる。
千景 愛おしい千景 52d りょうや まこ
- まこ